医療職者のための



危機理論の理論的背景


 危機理論を理解するためのベースとなる理論は、心理学あるいは精神医学の領域における、フロイトの精神分析(Psychoanalysis)、フロイトの理論から導かれたハルトマン、エリクソンらの自我心理学(ego psychology)、ラドの適応精神力学(adaptational psychodynamics)、マスローの人間性心理学(humanistic psychology)、ラザルスのストレス・コーピング理論(coping theory)、システム理論(system theory)、学習理論(learning theory)、および生理学領域における、キャノンの恒常性の理論(homeostasis)、セリエのストレス理論(stress theory)などがあげられます。
 なかでも、精神分析学の自我の考え方、精神分析学から派生したハルトマンらの自我心理学は重要です。危機理論の構築に関わったキャプラン自身が精神分析医であり、危機理論は精神分析学に立脚した理論といっても過言ではないでしょう。最近では、危機状況への対応として、コーピングを中心に記述した研究や考察が多く、ラザルスのストレス・コーピング理論も欠かせることはできません。

 各理論の詳しい解説はここではしませんが、危機理論関係の文献を参考に、理論的基盤をしっかり身につけて危機理論を臨床で活用していただきたいと思います。