医療職者のための



危機理論に関する文献


アルファベット、あいうえお順に文献をリストアップしています。一つ一つにコメントをしていますので、文献を手に入れる前に参考にしてください。山勢の著作、論文等は、最後の方にあります。
ここにあげたものは、私の主観も入れて選んだものです。これ以外にも紹介しきれない文献があります。まずは関心のある主要論文等を手に入れて、そのreferencesや引用・参考文献を参照してください。

  1. Aguilera,D.C..: Crisis intervention; The theory and methodology. Mosby 7th,1994. (小松源助・荒川義子訳:危機介入の理論と実際. 川島書店,1997.)
     危機理論・危機介入の歴史的発達、土台となっている精神分析の考え方、危機介入の方法論を知るために、欠かすことのできない名著です。かつては、ジャニス.M.メズイックとの共著でしたが、アギュララの単著になっています。アギュララ博士は、危機介入の世界的権威で、原本は14カ国語に訳されています。アギュララとメズイックの危機モデルを理解するためには、この本を読まなければいけません。1997年には、原本の8版が同じくMosbyから出版されています。
  2. Bloom,B.L.: Definitional aspects of the crisis concept. J of Consulting Psy.,27:303-311,1963.(鈴木善江訳:危機概念の定義に関する解釈.看護研究,21:393-398,1988.)
     40年前に書かれた古典的な論文です。その当時の危機の考え方を理解するのに役立ちます。訳者の鈴木善江というのは、私の妻(現、日本赤十字九州国際看護大学)の旧姓です。
  3. Blumenfield,M.& Schoeps,M.M.:Psychological Care of the Burn and Trauma Patient,Williams & Wilkins,1993.(堤邦彦監訳:救急患者の精神的ケア、医学書院MYW、1996.)
     救急医療で役立つ本です。初療展開での危機介入、精神疾患に対する危機介入、家族への危機介入、医療スタッフへの精神的ケアなどについて、ケースを用いて解説しています。
  4. Bouman.C.C.:Identifying priority concerns of family of ICU pat ients.Dimension of Critical Care Nursing.Vol 3(5),P313-319,1984.
     No.18のモルターの家族のニードを、認知的ニード、情緒的ニード、身体的ニードに分けて記述した論文です。日本語訳したものを、No.50の書籍で紹介しています。
  5. Caplan,G.: An approach to community mental health. New York: Grune & Stratton,1961.(加藤正明監訳・山本和郎訳 :地域精神衛生の理論と実際,医学書院,1977.)
     予防精神医学を中心に解説した危機理論の古典的名著です。自我心理学を説明している章では、キャプランの危機に対する考え方を理解することができます。絶版ですので、図書館等を通して手に入れてください。
  6. Caplan,G.:Principles of Preventive Psychiatry. Basic Books,1964.( 新福尚武訳: 予防精神医学. 朝倉書店,1970.)
     同じくキャプランの古典的名著です。これも絶版です。
  7. Deeken,A.:叢書 死への準備教育 第2巻 死を看取る. メヂカルフレンド,1986.
     シリーズ全3巻の第2巻です。第9章に、デーケンの悲嘆のプロセスの12段階について解説しています。
  8. Dlin.B.M.,Fischer,H.K.,& Huddell.B.:Psychologic adaptation to pacemaker and open heart surgery. Archives General Psychiatry,19:599-610,1968.
     集中治療領域で時々紹介されている心臓術後の心理的プロセスモデルです。古典的モデルなので、高度先進医療が施される現在の集中医療にはそぐわない面があるかもしれませんが、今にも通じる医療職者の基本的対応のイロハを述べていますので、参考になると思います。No.58の文献では、この論文を翻訳して紹介しています。
  9. Erikson,E.H. :Identity and the life cycle. Psychological Issues,vol1. New York:International Universities Press.1959.(小此木啓吾訳:自我同一性,誠信書房 1973.)
     精神分析学者エリクソンの発達的危機モデルについて述べられています。平易な解説ではありませんので、他の解説本などを参考にした方がいいと思います。No.54の文献では、簡単にその説明をしています。
  10. Fink,S.L.: Crisis and motivation: A theoretical model. Archives of Physical Medcine & Rehabilitation, 48(11),592-597,1967.
     日本ではあまりに有名な、フィンクのモデルの論文です。多くの引用・参考文献では1973年の著作になっていますが、誤りです。もちろん英語ですので、本格的にフィンクのモデルを知りたい場合はこの論文を手に入れて英語を読む必要がありますが、No.57の文献で日本語訳したものを解説付きで紹介していますので、こちらをはじめに読んだ方がいいでしょう。
  11. Freud,A.:Das Ich und Abwehrmechanismen.Internationaler Psychoanalytischer Verlag,1936.(外林大作訳:自我と防衛、誠信書房、1985.)
     精神分析学の創設者フロイトの末娘であるアンナ・フロイトによって書かれた本です。危機理論の土台になっている自我の防衛機制、自我心理学などを深く理解するためには参考にして欲しい本ですが、読み続けていくと眠くなります。
  12. Kubler Ross,E: On Death and Dying. Macmillan,1969.(川口正吉(訳):死ぬ瞬間−死にゆく人々との対話. 読売新聞社,1971.)
     キューブラーロスの死にゆく患者の心理的プロセスモデルです。この本は、世界的にロングセラーになっている名著です。ターミナルケアに携わる人にとっては、古典的な必読書でしょう。
  13. Lazarus,R.S.,& Folkman,S.:Stress,Appraisal and Coping.Springer,1984.( 本明 寛・春木 豊・織田正美監訳:ストレスの心理学. 実務教育出版.1991.)
     ストレス・コーピングと言ったらこの人を置いて他にいないでしょう。危機理論を臨床で用いるときには、コーピングの考え方は不可欠です。内容が濃く、読み応えのあるテキストです。心理的ストレス、コーピングを研究する者にとっては、バイブルです。但し、引用・参考文献が載っていないので、本文に出てくる文献を参照する場合は、原本を手にするしかありません。No.55の文献で、そのエッセンスを解説しています。
  14. Lazarus,R.S.: Measuring stress to predict health outcome. 東京での講演,1988. (林峻一郎編・訳: ストレスとコーピング──ラザルス理論への招待──. 星和書店,1990.
     ラザルスのストレス・コーピング理論を、東京での講演の内容を基にして、よりわかりやすくまとめています。
  15. Leske,J.S.: Internal psychometric properties of the Critical Care Family Needs Inventory. HEART & LUNG. 20, 236-244, 1991.
     No.18のモルターの家族ニードを、インベントリースケールとして用いられるようにした調査用具(CCFNI)についての原著論文です。CCFNIは、クリティカルケアの家族アセスメントツールとして最も有名なものの一つです。ここでは、家族ニードを5つに分類しています。現在、CCFNIの日本語版を作成する研究を進行中です。CCFNIの簡単な紹介はNo.61でしています。
  16. Lindemann,E.: Symptomatology and management of acute grief. American Journal of Psychiatry, 101, 141-148, 1944.
     キャプランと並び、危機理論の創設者の一人でもあるリンデマンの最も有名かつ古典的な論文です。危機理論を解説した論文(欧米)には、引用または参考文献として必ず載っています。医師であるリンデマンが、101名の人々(災害や戦争、病気で身内を失った家族)を対象に、インタビューを通して得られた知見についてまとめたものです。この論文に出てくるキーワードは、grief work(悲嘆作業)です。
  17. Maslow,A.H.:Motivation & Personarity. Haper and Row,1954.(小口忠彦監訳:人間性の心理学. 産業能率短期大学出版部,1975.)
     危機状態にある家族への精神的ケアでは、家族のニードを把握することが大切です。マズローは、ニード論の大家でもありますが、この本に目を通して、動機づけ理論や人間に対する見方を学ぶと、より一層ニードの意味が理解できると思います。また、フィンクの危機モデルを活用するときには、ニード論が不可欠ですので、この本をじっくり読んでみるのも1つです。
  18. Molter.N.C.、常塚広美訳、重症患者家族のニード、看護技術、30(8)、137-143,1984.
     日本に限らず、クリティカルケア領域では有名な論文です。重症患者家族のニードを45項目リストアップしています。このニードを基に、日本でも様々な重症患者家族のニードに関する研究がおこなわれてきました。
  19. Moos,R.H.(Eds.) :Coping with physical illness. New York: Plenum,1977.
     入院患者の心理状態と、それに対する対応をわかりやすく解説しています。もちろん英文ですが、岡堂哲雄先生の著者の中でその内容についてよく紹介されています。自分が修士の大学院生の時、岡堂先生にこの本を借りて、一生懸命辞書を引きながら読んだ覚えがあります。
  20. Selye,H.,杉靖三郎・田多井吉之介・藤井尚治・竹宮隆訳:現代社会とストレス. 原書改訂版. 法政大学出版,1988.
     危機理論を語る場合、ストレスについての知識を深めておくと、より一層、危機の意味や危機介入のあり方について理解できると思います。この本は、ストレスについて初めて体系的に記述したセリエによる原書です。2、3ページ読んだだけで眠くなると思いますので、本格的にストレス研究をする方以外にはお勧めしません。セリエのストレスについて書かれたわかりやすい解説本を読んだ方がいいでしょう。ちなみに、林峻一郎著「ストレスの肖像」(中公新書、1993)は、セリエのストレス理論を読み物としてわかりやすく紹介しています。私は大学院時代に一気に読めました(それなりにおもしろかったです)。
  21. von Bertalanffy,L.:General System Theory.George Braziller,Inc.,1968.(長野敬、太田邦昌訳:一般システム理論,みすず書房,1973.)
     一般システム理論を著した、ベルタランフィの名著です。システム理論に立脚したラザルスのストレス・コーピング理論を根本から理解するときには役立つでしょう。難解です。ベルタランフィも難解な顔つきをしています。
  22. Wright,B.:Sudden Death - A Research Base for Practice. Churchill Livingstone, 1996.(若林正訳:突然の死−その時医療スタッフは, 医歯薬出版, 2002.)
     イギリスの病院の救急部でカウンセリングを実践している臨床看護師が書いた本です。航空機事故、湾岸戦争、小学校乱射事件などで身内を失った遺族へのカウンセリングの体験を通してまとめています。訳者の若林さんは、自らも2度の肝移植を体験されている方で、患者の身になって日本語訳に取り組んだと思います。救急の臨床に携わる方にとって、絶対お勧めの本です。
  23. 稲村博:危機介入(Crisis Intervention),精神医学,19,1008-1019,1977.
     自殺予防運動やいのちの電話で有名な、稲村先生による危機介入について解説した論文です。豊富な論文に基づいてまとめられています。
  24. 岡堂哲雄他:患者ケアの臨床心理、医学書院、1978.
     文教大学の岡堂先生(平成13年度をもってやめられました)によるカウンセラーや臨床ナース向きの本です。エリクソンなどの発達モデルを理解するときに役立ちます。ちなみに私は、岡堂先生の指導の下で危機モデルに関する修士論文を書きました。
  25. 岡堂哲雄(編):現代のエスプリ 患者の心理 至文堂,1982.
     患者の心理について、その当時のオーソリティが解説しています。171ページから189ページでは、山本和郎先生が「危機介入の技法」というタイトルで危機理論と危機介入の方法論について言及しています。
  26. 岡堂哲雄・鈴木志津枝: 危機的患者の心理と看護,中央法規出版,1987.
     岡堂先生と高知女子大の鈴木先生とによる共著です。看護師向けに優しく解説した臨床実践向きの本です。臨床ナースの方は、ぜひ参考にして欲しいと思います。
  27. 黒田裕子:理論を生かした看護ケア、照林社、pp51-70、1996.
     日本赤十字看護大学教授の黒田先生による看護初学者向けの本です。危機理論の章では、事例を用いてフィンクのモデルを中心に解説しています。他の紹介本などと違い、フィンクの原著を基に解説している良心的な解説文です。黒田先生とは、私が臨床で働いていた頃より親交がありますが、そう言えば、危機理論についてディスカッションしたり共同で研究したりしたことはありません。
  28. 黒田裕子:救急看護における危機理論2;救急領域の看護実践に有効に活用できるために、エマージェンシーナーシング、7(8)、16-8、1994.
     前半では、危機概念を類似概念と対比させながら述べています。後半は、フィンクの危機モデルの紹介です(上記のNo.27とほとんど内容は同じです)。このエマ誌の8月号は、「救急看護における危機理論」という特集で、他に、小島操子先生の解説、脳死患者の家族援助、重症熱傷患者の家族援助などがあります。ちなみに、特集の扉のページに「1973年、米国のS.L.フィンクが危機理論を発表して以来・・・」という文章がありますが、フィンク論文の年も違いますし、フィンクが危機理論を発表したわけでもありません。
  29. 小此木啓吾:対象喪失─悲しむということ─ 中公新書,1979.
     家族の危機状況で見られる悲嘆について理解を深めるためには、この本を必ず読んで欲しいと思います。フロイトの「悲哀の仕事」(mourning work)についての解説もあります。
  30. 小島操子:危機理論発展の背景と危機モデル,看護研究,21,378-385,1988.
     当時、聖路加看護大学の教授であった小島先生による危機理論の総説です。小島先生は、日本の看護界に危機理論を紹介した先生の一人です。ちなみに、私の妻は大学院時代に小島先生から論文指導を受けていました。この「看護研究」21巻5号は、危機理論の特集号として編集されていますが、当時の聖路加看護大学の大学院生(黒田先生や矢田先生、中村さん、私の妻など)がこの特集で執筆しています。
  31. 鈴木志津枝他:危機理論の活用、看護研究 、21、438-449、1988.
     現在も危機理論に関して講演等をして活躍されている、高知女子大学の先生による危機理論の解説です。あまり関係ありませんが、本学保健学科の授業で、非常勤講師として「緩和ケア論」を講義していただいています。
  32. 谷岡美佐枝他:ICUせん妄と状況的危機との関連性の検証、ハートナーシング、15(1)、47-51、2002.
     No.59の論文と同じ号に(偶然)掲載されている臨床の看護師さんによる研究報告です。山勢の危機モデルを用いて、55名の患者を対象に実証的研究をしています。
  33. 堤邦彦編著:基礎から学ぶ救急看護のメンタルケア、エマージェンシーナーシング夏期増刊、1995.
     北里大学病院救命救急センターの堤先生(精神科)の編集による増刊号です。ドラマ等で医学監修もしている先生なので、知っている人も多いと思います。この本では、救急看護で遭遇しやすい精神状態、精神病理、身体疾患などを取り上げ、臨床の医師や看護師が実際のメンタルケアに基づいて解説をしています。
  34. 中村めぐみ、矢田真美子:Finkの危機モデルによる分析、看護研究、 21、420-426、1988.
     「看護研究」21巻5号の危機理論の特集号で、フィンクのモデルを使って分析したものです。フィンクのモデルを使った臨床実践や研究をするときには、ぜひ参考にしてもらいたいと思います。ファーストオーサーの中村さんは、現在聖路加国際病院の緩和ケア病棟で活躍している婦長さんで、がん看護専門看護師の第1号でもあります。妻の大学院時代の同級生ですが、とってもかわいらしく、素敵な人です。
  35. 西部祐子、山勢善江他:脳死患者家族と看護婦の対応. エマージェンシーナーシング,4(5):28-31,1991.
     脳死患者家族の心理プロセスをケーススタディを基に記述したものです。ICU症候群で有名な日本医大の黒澤尚先生に指導をいただきながら、モデル化したプロセスについて解説しています。プロセスの各段階での基本的看護介入の考え方は、No.50の文献を参照してください。
  36. 長谷川浩・平山正実・鶴田早苗(編):危機場面における精神的ケア─ICU・救急を中心に−,医学書院,1991.
     ICU医療、救急医療で遭遇する患者と家族の精神的な問題について、危機という側面から解説しています。看護者のストレスについても言及しています。難しい言葉はそれほどなく、初心者にもわかりやすい内容です。
  37. 藤野久美子、荒川義子:看護における危機理論、看護40(1)-40(9)、1988.
     雑誌「看護」の1988年1月号から8月号まで連載された危機理論・危機モデルの解説です。引用・参考文献もしっかりしていて、私も大いに参考にさせてもらいました。
  38. 山本和郎:コミュニティ心理学,東京大学出版,1986.
     ハーバード大学とマサチューセッツ総合病院でキャプランから直接指導を受けた臨床心理学者の著作です。危機理論を語る上で、絶対に欠かせることが出来ない名著です。自分も、この本からかなり多くのものを引用したり参考にしています。危機理論を教える人は、これを読まなければ教えることはできないと思います。
  39. 山崎道子:ソーシャルケースワークとcrisis theory,精神衛生研究,16,47-57,1968.
     古い文献ですが、ケースワーカーの立場で危機理論を解説し、事例もとり入れてその実際について考察しています。
  40. 山勢博彰、山勢善江 :危機理論とその応用, 月刊ナーシング,12(11):68-73,1992.
     私と妻がまだ臨床で働いていた時に、黒田先生に依頼されて書いたものです。フィンクのモデルを用いて事例展開をしています。今読むと、赤面するほど恥ずかしい文章を書いています。
  41. 山勢博彰:危機的患者の心理的対処プロセス, 看護研究,Vol28(6):13-23,1995.
     私の修士論文の概要です。コーピング理論を取り入れて危機モデルを作成したことが原著論文として載っています。救命救急センターに入院した患者の実際のデータを基に構築したモデルです。他の一部のモデルにあるように、インタビューや文献研究、経験的考察から作ったモデルではありませんので、それなりの説得力があると思っているのですが・・・。このモデルの解説は、No.59の文献を参照した方がいいです。
  42. 山勢博彰、山勢善江:危機理論と危機介入、認定看護師をめざす救急ナーストレーニング、エマージェンシーナーシング夏期増刊、147-160,1996.
     危機理論と危機介入に関する救急看護婦への臨床教育の教育目的・目標を明確にしています。方法論と内容についても述べています。
  43. 山勢博彰:危機介入とマインドコントロールの接点;急性期患者に精神的援助を行う看護婦の役割と責任、看護展望、21(9)、87-94、1996.
     オウム真理教の事件があった後に、マインドコントロールと危機介入の類似点を取り上げて、比較的私的な考えを展開した論文です。難しい論調で記述していますが、未だにその論文に書いた考えには変わりがありません。オウム真理教についてネガティブに取り上げましたので、論文が掲載されてしばらくは、背後に注意して過ごしていました。
  44. 山勢博彰:危機介入、全科に役立つ精神看護の理論と実践、月刊ナーシング、16(13)、72-75.1996.
     危機理論、危機の考え方、危機モデルについて簡単に解説しています。山勢の危機モデルを用いて、ケースの実際の一部も紹介しています。
  45. 山勢博彰:救急看護における危機理論の活用、エマージェンシーナーシング、11(3)、10-16、1998.
     救急看護師向けに、危機理論と危機の考え方、危機介入、危機モデル、危機の看護過程について解説しています。このエマ誌の3月号は、「危機理論を活用する」というタイトルで、私が特集を組みました。
  46. 山勢博彰、佐藤憲明:NPAC看護診断データベースを用いた看護過程、エマージェンシーナーシング、11(3)、17-25、1998.
     救急看護認定看護師の第1期生である佐藤氏と書いた論文です。NPAC(Nippon Medical School's Psychosocial Assessment Tools for Nursing Diagnosis in Critical Care Nursing)とは、クリティカルケアにおける心理・社会的看護診断データベースです。このデータベースは、山勢の危機モデルとロイ適応モデルを合体させ(無理矢理一緒にした?)、心理・社会的問題に関する看護診断を導きやすくしたものです。事例を用いて紹介しています。
  47. 山勢善江、山勢博彰:欧米における危機に関する最近の看護研究の動向、エマージェンシーナーシング、11(3)、35-43、1998.
     1990年から1997年までの危機理論、危機介入に関する海外の論文(英語)を文献検索し、レビューした総説です。患者に焦点を当てた研究と、家族に焦点を当てた研究とに分けています。豊富な海外文献をレビューしていますので、危機理論関係の研究をするときには、必ず役立つはずです。海外の文献を見ると、日本ではずいぶんと偏った危機モデルの用い方と研究をしていると実感します(あえてモデルの名は示しませんが・・・)。
  48. 山勢博彰、山勢善江:救急看護に関する研究の動向と今後の課題、看護研究、33(6)、451-465、2000.
     これも文献レビューによる総説です。救急看護に関する研究について、1987年から1999年までの日本での論文(513件)と1982年から2000年までの海外の論文(2989件の内、原著論文の158件)をレビューしています。掲載雑誌が研究者向けという性格もあり専門的立場で論じていますが、救急看護の研究者にとっては、かなりしっかりとしたエビデンスになるのではと思っています。この中で、スペースは多くとっていませんが、危機に関する研究の動向についても言及しています。
  49. 山勢善江.:理論の理解と事例への応用3 危機理論、月刊ナーシング、19(1)、28-32、1999.
     外傷で入院した事例をアギュララとメズイックのモデルを用いて展開し、危機モデルの活用例を紹介しています。アギュララとメズイックのモデルのアセスメントガイドラインを示しています。
  50. 山勢善江、山勢博彰:家族への看護、氏家幸子監修「成人看護学B.急性期にある患者の看護T」、廣川書店、109-121、2001.
     看護大学生向けの教科書の中で、クリティカルケアでの家族看護について書いています。111ページには、No.4のボウマンの家族ニードを載せています。また、116ページには、No.35の研究をさらに発展させた「脳死患者家族の心理的対処プロセス」について紹介しています。
  51. 山勢博彰:臨床での危機理論の活用と看護研究−理論とモデルに潜む問題点を中心に−、日本救急看護学会雑誌、2(2)、15-23、2001.
     第2回日本救急看護学会で教育講演した内容をそのまま論文にしています。理論自身に潜む問題点、危機理論に関する迷信、危機モデル適用の問題点、危機理論を用いた看護研究の問題点を指摘しています。危機モデルを実際に活用するときや看護研究をするときには、ぜひ最初に読んでもらいたいと思っている文献です。
  52. 山勢博彰:精神的危機状況とは、ハートナーシング、14(5)、471-474、2001.
     「ICU・CCUにおけるメンタルケア−看護にいかす危機理論−」という全12回の連載の第1回目の解説です。本連載では、前半に危機理論を理解するために必要な心理学関係の基本的理論を解説し、後半は幾つかの危機モデルの解説をしています。対象は、クリティカルケアの看護師という設定ですが、それ以外の方々にも参考にしていただけると思います。第1回目では、危機の概念を説明しています。
  53. 山勢博彰:精神分析の理論、ハートナーシング、14(6)、559-562、2001.
     危機理論のイロハのイは、何といっても“精神分析”です。危機理論に重要だと思われる精神分析の一部について、簡単に解説しています。
  54. 山勢博彰:自我心理学、ハートナーシング、14(7)、633-636、2001.
     エリクソンとA.フロイトの自我心理学について解説しています。発達的危機と自我の防衛機制について知識を得られると思います。
  55. 山勢博彰:ストレス・コーピング理論、ハートナーシング、14(9)、839-843、2001.
     ラザルスの理論を簡単に解説しています。ストレス・コーピング理論の入門として読むことが出きると思います。
  56. 山勢博彰:危機理論と危機モデル、ハートナーシング、14(10)、969-973、2001.
     危機理論と危機モデルの概要を解説したものですが、相変わらず同じようなことを述べています。最後の方に、No.51の論文の一部を載せています。
  57. 山勢博彰:フィンクの危機モデル、ハートナーシング、14(11)、1037-1042、2001.
     1967年のフィンク論文を基に、このモデルを詳しく解説しています。フィンクのモデルを解説した多くの記述(黒田先生のは除く)にあるような、中途半端な解説ではありません。この論文のおわりには、日本でのフィンクの危機モデルの用い方について、痛烈に批判しています。フィンクの危機モデルを活用してみたいと思っている方は、ぜひこの論文を読んでいただきたいと思っています。
  58. 山勢博彰:ドゥリンの心臓手術後の心理的プロセス、ハートナーシング、14(12)、1145-1148、2001.
     No.8の論文の紹介です。ドゥリンのモデルを詳しく紹介したのは、この論文が日本で初めてだと思います。CCUなどの看護師さんに一読してもらうといいかもしれません。
  59. 山勢博彰:山勢の心理的危機対処プロセスモデル、ハートナーシング、15(1)、15-19、2002.
     大学院で研究した危機モデルの解説です。No.41の論文を基に記述していますが、「心的エネルギー」の概念を導入して解説しています。
  60. 山勢博彰:ICU・CCUにおける精神症状、ハートナーシング、15(2)、170-174、2002.
     危機理論、危機モデルによってアセスメントし対応するには限界のある、精神症状について解説しています。主にせん妄を取り上げていますが、ICU症候群に関心のある方には、ちょっとした読み物になっていると思います。
  61. 山勢博彰:家族への危機介入、ハートナーシング、15(3)、243-248、2002.
     前半は、No.15のCCFNIを中心にクリティカルケアの家族ニードについて言及しています。後半は、家族のストレス・危機モデルについて、ヒルのローラーコースターモデル、ABCXモデルの解説をしています。
  62. 山勢博彰:危機理論と危機介入、救急医学、26(1)、pp5-9、2002.
     救急医療に携わる医師向けに書いたものです。内容は変わりばえしませんが、言葉使いが難しいかもしれません。
  63. 山勢博彰:危機モデル、小田正枝編「看護過程がよくわかる本」、照林社、pp33-36、2002.
     この本は、看護の初学者(看護学生や新人ナース)のために看護に関する理論を紹介し、看護過程の考え方をわかりやすく記述したものです。危機理論についてイラスト入りで解説しています。次のページから、家族モデルも紹介しています。